色のついた羽
周りの人達に
良い子ねと褒められるあの子。
ところが
マリコの知っているあの子は
嫌味ったらしくて
粗暴な奴。
あの子は
ちっとも良い子じゃないよ。
あの子は
ちっとも優しくないよ。
みんな騙されているよと
言いたくもなるさ。
あの子の
良い子ちゃんは計算ずく。
マリコに向けられた
あの子の中の
てんこ盛りの悪意たちに
心拍数が上がり
心がキリキリ
指先がワナワナ。
普段は眠らせていた
マリコの黒い翼が
仇を取ろうと羽を広げた。
羽を強くはためかせ
戦いを告げる。
マリコは
はじめて
その勇む翼に
力を与えようとした。
そして思った。
そうか
私も同じような翼を
心の奥底に
持っていたんだね。
マリコは
黒い翼を
その胸に抱きしめた。
もう大丈夫だよ。
翼は
しばらくすると色を変えた。
そして
その翼が
マリコをふんわりと包み込んだ。
そうだったのか。
黒い翼も
白い翼も私のモノ。
マリコの口元から
ふんわりと笑みがこぼれ
嫌いだった
あの子の名前を
友達のように呼んだ。